Take it easy.

A life spent making mistakes is not only more honorable,
but more useful than a life spent doing nothing..

冬城オルタナティヴ

15
2014  06:27:08

いい話なんだけど、そこにほとんど幻想が無いのがイイ。「ディア・ドクター」

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(2010/01/08)
笑福亭鶴瓶、瑛太 他

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いや……これは本当にいい作品でした。
地味そうな映画だったもんで、今までずっと手元にあったのに見てなかったんですよね。アホだなあわたし(笑)。もっと早くに見ておけばよかった。
地味だけど、本当に良い作品、いい演出、いい物語でした。
西川美和監督作品を見るのはこれで三本目でして。この作品も非常に気に入りました。完成度も高いです。

寒村にただ独り赴任していた医者が突然失踪するところから物語が始まり、その医者(笑福亭鶴瓶)を探すために刑事がやってくるわけです。それで医者が村の人間にどれぐらい慕われていたとか、どんな風に人々と接していたかという話を追っていくうちに、実は医者には秘密があって。いろいろなことが分かってきて……という話です。
いろんな人の視点から、だんだんと中心人物が何を考え、何を選択したのかがおぼろげながら分かってくるという、なかなかニクイ映画でした。

一人の異邦人が、ある世界にコミットしてその世界を変えていったという物語ではあるのですが、この作品の場合は医者が変えたんではなく、周りの人々も片棒を担いでいたというか。周りの人間が一人を中心として自ら理想を作っていったことが見えてくるわけで。
まさに「愛」ではないんだわ。そこがリアルです。

わたしの好きなシーンは三つあって……
と、ネタバレコメントは「続き」以降に書きますね(笑)。  
好きなシーンはですね。三つあります。

チャラ男医者が「オレもここで働きます」って迫るところ。あれで、医者が不機嫌になるところがいい。彼も人間で、まさに「愛」だけで動いているんじゃないことが分かる。チャラ男にちゃんと真実を吐露してるのに文脈がつながってないから「何言ってるんすか」ってなる。あのシーンは脚本的にも本当に見事だなと思います。

それから、ラスト近くで鶴瓶がバイクに乗って山をずーっと下っていくところ。緑の中にある曲がりくねった一本道を、カブで、着の身着のままで急いで走り去っていく。
あのシーンはすごくいいです。全くセリフもないけど、今までこの映画を観てきていたら、このシーンで何も胸にくるものがない人はいないでしょう。
まさに観客と一体になる瞬間ってーのかな。

こういうところが、この西川作品のミソだなって思います。
この人の映画は、必ず観客を巻き込む。「もしかして~~ってことかな?」とか「ああ、それで○○は××しちゃったのかな」とか、見ながら思う観客を想定してる。
見えない観客の心のふわふわした部分をつなげていって、物語を作り上げていく。
ニクイですね。ニクイです(笑)。

んで、言わずもがな、ラストシーンも秀逸ですね。
鶴瓶の顔を正面から映さないところがいい。ちょっとだけ垣間見えるところが絶妙です。

よい作品にめぐり会えました。
「夢売るふたり」もこれから見ようと思います。
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